No 年月日 タイトル 掲載誌・新聞 放送 地域 頁数 備考
063 2009.7.22 一杯の牛丼

ひと月に一杯の牛丼を食べる

食べるというと毎日と思うかもしれないが

ひと月の食事は、一杯の牛丼だけである

始めは、三食の食事にありつけた

一日、七食の時代もあった

五時に食べて、九時に食べて、十二時に食べて、三時に食べて、

六時に食べて、十時に食べて、一時に食べた

しかし、気がついたら、一日に一杯の牛丼だった

そのうち、三日に一杯になった。

そして、一週間に一杯になった

さらに、二週間を一杯で空腹を満たし

そして、ついに月に一杯になってしまった。

何冊もの都市銀行の預金通帳は、十円単位の数字しか記載されてなくて

いくつもあった貯金箱もからからという音すらたてなくなった

郵便局で戴いた赤いポストの中にも牛丼を買う金も残ってはいなかった。

一杯の牛丼の肉を、

上下の臼歯で細かくなるまでかみ締め

馥郁と香る牛肉の脂の滴りを少しづつ嚥下した

白いご飯はどろどろの糊のようになるまで口中で噛み砕いた

口中で肉汁とどろどろの米飯が融合して

それは、なんとも懐かしい味になっていた。

経済戦争に負けた経営者は

戦争の時代に似ていると、何処かの空の一点を見つめ

さっき食べた牛丼が、一ヵ月後に食べることができるだろうかと、悲しい気持ちになっていた。

あの時代の気持ちを思い起こすと、

空腹の少し上で、心の奥底からエネルギーが沸き抱いてくることもあった

ささやかながら、牛丼一杯で生きているからだと思い

牛丼一杯で次の1ケ月生きられるだろうかと思った

そして今は、曲がりなりにも三食にありついて冥土の旅の一里塚に戻っている

投稿: 早崎日出太 2009年7月22日 (水) 23時19分

   日出太の下手な綴方・詩作・もろもろのエッセイ目次
  トップ頁 作成:2013/10/12 (土) 17:00:16/修正:2013/10/12 (土) 16:59:59