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064 2009.7.22 ベンジャミンが今年も小さな葉を出した

娘が尾瀬のビジターセンターに勤めていた頃だから、もう10年以上になるのかも知れない。

マンションの入口に夏の間、鎮座している、高さ1メートルほどのベンジャミンが置いてある。毎年、梅雨の季節になると健気にも小さな新しい葉をつける。その貧弱な緑の小さな葉が萌黄色で何とも美しい。振り返ると、この十年は激動の十年間だったような気がする。

何しろ波乱万丈と言うのはこんな人生を言うのだろうかと思うのだが、このベンジャミン同様大病もせず無事に生きてきた。このベンジャミンだって何度も枯れかけた、その都度、抱き締めるようにして土を替え、復活剤や肥料を与えて白くなった葉を復活させた。

熱帯性の植物なのか冬、太陽の当たる窓際に置けば年中青い葉は枯れることはないが、寒い季節、外にでも放置しようものなら葉を全部落としてしまう。そして、螺旋状の幹を露出させてしまうのである。それはまるで、美女が肩からすとんと衣類を小気味良く脱ぎ捨てるように一糸纏わぬ螺旋状の幹を露出させてしまうのである。この間、僕の尊敬する團伊玖磨先生ご夫妻や母や少年の頃、戦争を共存した友人の多くが彼岸に旅立ってしまった。

先日、「團伊玖磨アーカイブス」が設立され、ご子息紀彦さんからこの会の設立趣旨が語られ、團先生と逢ったこともない若者達がこの会を運営すると発表があった。まあ、時代の流れだから仕方がないのかも知れないが、私は、團伊玖磨という20世紀を生き抜いた巨人は、音楽作品や著作において誰もがなしえなかった足跡を残された事実は凄いとしても、矢張り人との絆が全宇宙的だと何時も思うし最も大切なことのように思う。そのような意味合いから言えば、その事実を証言できるのは同時代に生きた者にしか理解することが出来ないのではないだろうか。

團先生が亡くなって、7年が過ぎた。このような会ができることが遅すぎたように思う。先生と親交のあった多くの人が、この世を去ってしまった。幸い、何人かの方達にはお会いしお話を伺い、先生が残されていたことの万分の一は調べることも出来た。しかし、6万時間が経過してしまった。

過ぎ去ったことは、仕方のないことかもしれないが、僕にとっては先生が旅立たれてこの方切歯扼腕の事実なのである。

何年か前に旅に出る前の数時間の暇に、ケビン・コスナーが主演する、「コーリング」というタイトルの映画を見た。

コスナーといえば、今やハリウッドでは欠かせないアーチストだが、1987年の「アンタッチャブル」、「ロビン・フッド」「JFK」(以上1991年」などなど多くの名作に出演しているのは、周知の事実である。

コスナーの他に「スタートレック/ヴォイジャー」でボーグの女王に扮したスザンナ・トンプソンが妻エミリーを演じ、渋い役柄をこなすリンダ・ハント、キャッシー・ベイツの女優等、男優には、「アリ」、「日なたの干しぶどう」のジョン・モートン、「スティング2」の舞台俳優ロン・リフキン、ジェイコブ・ヴァーガス等渋い俳優が出ていた。

映画の荒筋は、ベネズエラに行き事故で亡くなった妻が、亡くなる前に子供を出産しその子供が現地の人々ベネズエラのヤノアマ族に大切に育てられ成長していた。亡くなった妻が娘を救出するよう、冥界から夫である医師ジョーをコーリングすると言う設定である。そして結末は、現地に赴き成長した妻の忘れ形見である娘と感動的な邂逅をするというドラマである。

團先生の死後、僕には奇跡的なことがいくつも起きた、偶然と言えばそれまでだがその奇跡的な事実は、宝くじの一等に当たるチャンスよりも確立の高い不思議なことが次々と起こったのである。先生は、直接冥界から話しかけることが出来ないことから、人との出会いにおいて僕にチャンスを作っていただいたと思っている。

偶然に拾った手帳の持ち主が八丈島樫立に住む、先生の仕事場の隣の方だったり、サントリホールで偶然知らない方に余ったチケットを差し上げたら先生の祖父のご兄弟の曾孫だったり、永年付き合っている勝沼のワイナリーのお嫁さんがNHKの番組「心の旅路」のアシスタント・ディレクターで先生とウィーンや北欧にご一緒したとか、何しろ幾つものドラマが生まれたのである。

でも、今となれば僕の役目は終ったのかも知れないとの思いに至っており、世の中の片隅で、これから大成するであろう若者達のお手伝いをするのが僕の使命であるような気がしている。先生が、これからどんな「コーリング」があるのか楽しみでもあり、先生に天界から呼ばれているのかも知れないと、思い至ったのである。さらに、この続きを書かなければいけないなと思っている。

僕が何時も抱き締めているベンジャミンのことから脱線してしまった。

投稿: 早崎日出太 2009年7月22日 (水) 23時19分

   日出太の下手な綴方・詩作・もろもろのエッセイ目次
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